瘀血の見極め
患者の状態を確認すると瘀血の兆候を示唆する状態がみてとれます。今回は、その兆候を見ていきましょう。
男女ともに瘀血を示唆する兆候として重要なものは、眼瞼部の色素沈着、舌の暗赤化、右臍傍部の抵抗、圧痛があります。さらに男性では歯肉の暗赤化や痔、女性には皮下溢血や月経障害が重要な兆候として見られます。
ほかにも顔面の色素沈着や口唇の暗赤化等もみられます。
これらの症状が重なることで、瘀血の症状の重軽を評価していき、薬剤を選択します。
駆瘀血剤 桃核承気湯
桃核承気湯
桃仁には破血袪瘀作用と潤燥滑腸、大黄には瀉下清熱と涼熱袪瘀作用があり、両剤を組み合わせることで、瘀血症状を改善します。
桂枝の気のめぐりを改善するとともに血の停滞を改善する温通経脈作用は、桃仁の破血袪瘀作用を補助し、気血をめぐらせます。
芒硝は瀉熱通便作用があり、大黄の瀉下清熱作用を補助し、裏熱を取り除くことができます。
甘草は芒硝と大黄の作用を緩やかにします。
裏熱を伴う実証の瘀血で、便秘を伴う場合に有効です。
小青竜湯。名前からは何の薬かわかりません
これから花粉症の季節になります。今回は、そんな時期につかえそうな漢方薬「小青竜湯」を取り上げてみましょう。
太陽病期に使用する漢方薬として小青竜湯や桂枝湯、麻黄湯があります。小青竜湯は、桂枝湯や麻黄湯を用いても表証が解消せず、心下(みぞおち)に水飲が停滞した状態(胃の中に過剰な水分が貯留した状態)により水気と寒邪が相打つことで、吐き気を催すが何も吐けない乾嘔、発熱、咳等の症状に対し、用います。さらに、口渇、下痢、むせび、尿量減少と下腹部膨満、息切れ等の症状が出る場合も同様です。
小青竜湯は半夏、麻黄、芍薬、乾姜、甘草、桂枝、細辛、五味子の8味から構成されています。麻黄と桂枝は発表剤で表証を解し、桂枝は水毒の上衝を抑え、麻黄は喘咳を治します。また、半夏、乾姜、細辛の 3 つは心下の水飲を去り、芍薬と五味子は咳嗽を収め、甘草は諸薬を調和し、上衝した気を静め、組織の緊張を緩和します。特に、乾姜と甘草は、特に呼吸器系に対し、強力に温めて利水をはかる作用があります。
傷寒にかかり、心下に水飲が停滞し、それで咳をして軽い息切れがし、表証がまだ
解していないために発熱するけれども、体内に水飲があるために、咽が渇かないものは小青竜湯を用います。表の邪を散ずると同時に、心下の水をさばく働きがあります。また、水分が四肢に滞留して浮腫を呈する溢飲の場合の発汗を促します。さらに、咳と呼吸困難が強くて横になっていられない状態に小青竜湯を用いることができます。
ちなみに、小青竜湯の由来は、中国の神話に出てくる四神の 1 つで、東方を守護する神の青竜からきています。青は、五行説では東方の色ですが、その原義は、植物の緑色であると考えられます。青竜の青も緑色で、麻黄の色から名付けられたものだという説があります。