良く食い、良く出し、よく眠る。基本です。

 今回は、服用する漢方薬はどうのように決まるのでしょうか。
 それには、漢方医学でどのような状態が健康であるかを知る必要があります。
 そもそも「健康」とは?

 日頃から、3食おいしく食事をとることができ、毎日のお通じがスムーズで、普段からよく眠れることです。漢方医学では、健康な状態の考え方の一つとして「体は常にめぐっていること」、「体は常に変化していること」と捉えています。
 まず、人の体は、常に動きめぐっています。人は、歩いたり家事をしたり働いたり、何らかの形で体を動かしています。体を休める時も体の中では、呼吸し、血液が流れ、食べた物を消化します。

 この動かし、めぐらせる要素を、漢方医学では「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」と捉えています。快適な日常生活を送るには「気・血・水」がスムーズに動き、めぐっていることが大切です。

 同時に、体は常に変化しています。髪の毛は伸び、時間の経過とともに抜け、そして新たな髪の毛が生えてきます。昼は元気に活動できるようになり、夜は睡眠をとるために眠くなります。春夏秋冬の季節によっても変化します。加齢により子どもから大人に、そしてやがては老いていきます。昼夜でも体は変化します。

 これらの変化を「陰(いん)」と「陽(よう)」の力関係の変化によると考えます。「陰」とは暗く静かな状態で、「陽」とは明るく活発な状態をいいます。体力が落ち、新陳代謝が下がり、体が冷えている等の状態を「陰」、体力があり、新陳代謝も活発で、体も温かい等の状態を「陽」と捉えます。眠ったり、休んでいる時を「陰」、働いたり体を動かしている時を「陽」と考えてみてください。

 「気・血・水」のめぐりの異常や、「陰・陽」の変化に異常がおこると、体はバランスを失い「ゆがみ」を生じます。その時、体には元に戻す力、つまり自然治癒力が備わっていますから、このゆがみを正常に戻すことで健康でいることができます。

 しかし、このゆがみを元に戻すことができなければ、病気となります。これを「病(やまい)」といいます。その前段階である「ゆがみ」のある状態、「なんとなく疲れる」「なんとなく眠れない」といった状態を「未病(みびょう)」といいます。「未病」の状態は、現代医学では検査結果に異常がない場合があり、「病」とは考えられないこともあります。漢方医学では「未病」も「病」も治療の対象となります。「未病」の段階から適切な治療を行うことで「病」への移行を防ごうという考え方です。

 漢方医学では、その人の状態に合わせた生薬を組み合わせて漢方薬を調剤したり、鍼や灸で体を刺激することで、ゆがみを取り除き、めぐりを整えるという手法をとります。